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2005年5月 8日 (日)

秋刀魚の味

 昨日、早々と寝たので、朝4時頃に、目が覚めてしまった。眠れそうもないので、映画を観ようと起き出した。昨夜、『マッケンジー大作戦』を観ながら途中で寝てしまったのだが、明け方から、戦争映画を観るという気もしなかったので、小津安二郎の『秋刀魚の味』を観ることにした。小津安二郎の遺作となる映画である。
 平山周平(笠智衆)は、結婚をして世帯を持っている長男夫婦(佐田啓二と岡田茉莉子)がおり、24になる娘(岩下志摩)と大学生の次男(三上真一郎)と暮らしている。妻を亡くしてはいるが、今が一番幸せな時だと思っている。中学時代の友達からは、娘を早く嫁にやれ、見合いをしろといわれていたが、その気にはなれなかった。娘も、家族の世話があるので、嫁にはいけないといっている。
 中学のクラス会に恩師(東野英二郎)を迎えた席で、昔、可愛かった娘は結婚をすることもなく、今は、恩師と中華そばやをやっているという。恩師を送って先は、場末の中華そばやで、恩師の娘(杉村春子)に会うが、昔の面影はなかった。
 娘の真意をさぐると、長男の会社の同僚(堀江晋)にどうやら気があるらしい。長男に同僚の意向を聞いてもらうと、すでに、同僚もその気があって、前に打診したときに、結婚をする気がないというので、諦めて、婚約してしまったという。結局、娘は、平山の友人の勧める見合いの相手と結婚することになる。
 
 中年の男が娘を嫁にやる気持ちになり、やった後の寂しさを描いた話といえば、身も蓋もないが、最近の大仰なドラマとは異なり、ドラマチックなストーリーがなくても、じわっと身につまされる映画である。映画の後半になると、外も明るくなりだし、プロジェクターで映し出される映像も白々としてきたが、気持ちよい日曜の朝を迎えるのに相応しい映画であった。
 割烹の女将に、若い妻をもらった友人のことを聞かれて、今日、葬儀なんだよという場面と、平山が友人に娘の見合いの話を進めてほしいというと、居合わせた友人が自分の紹介した娘と見合いをして、決まりそうだと平山にいう場面が、淡々とした映画の中で、観客もびくりとする数少ない場面である。特に、後者の場面は、父である平山だけではなく、観客の方も、やっと嫁に行く気になった娘が不憫になってくる。いずれも、すぐに、友人たちが口裏を合わせた他愛もない冗談であることが分かる。淡々とした話の展開のアクセントとして秀逸であった。
 娘が長男の住む家を訪れた後、長男の同僚と電車に乗るのが、東急池上線の石川台駅がでてくる。駅名の表示板があるのみのホームの場面であるが、昔、懐かしい駅といった風情がなんともいえない。池上線に乗っている人は是非観てほしい場面である。

 ところ、鱧(はも)は出てくるが、秋刀魚(さんま)は出てこない。考えてみると、小津安二郎の世界は、秋刀魚というよりも、鱧の方が似合う。それにしても、割烹、バーなどと、酒を飲む場面がやたらに多い映画である。

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