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2005年9月 6日 (火)

『天使のナイフ』 

○2005年9月6日(火)
 『天使のナイフ』 薬丸岳 講談社

 大阪にいるTさんから、今年の乱歩賞は当たりだよとの電話があった。
 当方の感性がにぶってきたのか、書店で棚を眺めても、感興を呼び起こされることが少なくなった。乱歩賞ということで、購入はしていたのだが、読もうとする意欲がわかず、机の上に積んだままにしてあった。
 『天使のナイフ』は、窃盗に入った少年たちに妻を殺された男が主人公である。男は、一人で幼子を育てながら、コーヒー・ショップを経営している。店の近くの公園で、妻を殺した少年の一人が殺害され、男は容疑者となる。男は、妻を殺した少年たちを殺してやりたいと、テレビで話したことがあった。
 罪を犯した少年の厳罰化、加害者の人権よりも被害者の人権をという最近の流れにそったストーリーが展開していく。
 弁護士をしていると、現実に、加害者側の相談を受けることもあるし、被害者側の相談を受けることもある。それに、事件も、一つ、一つが異なった様相を呈しているので、一概に語ることができない。それだけに、最初の内は、また、この手の話かという印象が強かった。平成13年度の「13階段」なども、もういいやと思い、途中で投げ出してしまった。
 ただ、「天使のナイフ」は、謎の引きづり方がうまく、最後まで一気に読み通した。謎の展開のしかたが、小説のテーマと首尾良くシンクロし、輻輳する事件に深みを与えている。最後の弁護士との対決シーンについては、唐突という感じもするのだが、読む者によってそこがいいという人もいるのだろうとか。
 最後に、作者が参考とした20冊以上の文献の一覧を掲載している。この一覧を観ても、作者のバランスのいい目配りのよさが見えてくる。小説を書く以上、この程度の勉強はしなさいということであろう。

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