« 『読むJ-POP』 | トップページ | 『ピアノ・ブルース』  »

2005年9月 3日 (土)

『報復という名の芸術』

○2005年9月3日(土)
 『報復という名の芸術』ダニエル・シルヴァ 論創社

 ”「復讐は悪いことではないということだ。復讐は健全なことだ。魂を清める」
  「復讐は次の殺しと復讐へと導くものでしかない。テロリストを皆殺しにしても、自ら石でも銃でも手に取り、出番を待つ少年が絶えることはない。サメの歯みたいなものですよ。一本だめになれば、代わりに一本生えてくる。」”
 
  絵画の修復士であるガブリエル・アロンは、イスラエルの諜報機関<オフィス>のお暗殺工作員である。ガブリエルの標的は、パレスチナ人のテロリストであるタリク・アルホウラニ。
  アロンは、ブラック・セプテンバーの一員であったタリクの兄を殺害した。タリクは、その17年後、アロンの妻と子をアロンの目の前で殺して復讐を遂げていた。
  ファッション・モデルのジャクリーヌは、オフィスの女性工作員として、タリクの一味に潜入し、アロンに協力する。アロンとジャクリーヌは、テロリストの暗殺作戦を共にし、一時は愛し合う仲であったが、アロンの妻子の死により、2人の関係は途絶えていた。
  タリクは、イスラエルとの和平交渉を進めるアラファト議長の暗殺
  ジャーナリスト出身のシルヴァは、イスラエルの諜報機関のアロンを主人公にはしているが、アロン、タリクそして、ジャクリーヌの出自と現在を通して、パレスチナとイスラエルとの相克の歴史を的確に描こうとしていることには好感をもてるが、近時のパレスチナ・テロリスト対欧米の諜報機関という図式を超えてはいない。ただ、タリクがアラファトと相まみえる終章のシーンはきらっと光るものがあった。
 
  今年の刊行された外国のミステリは、著作権が切れたような古い作品ばかりが目につき、新しい小説にこれといったものがない。
  門外漢ながら、ここ数年、文化財の保存修復に携わっているNPOに関わっている。主人公が絵画の修復士という表紙の惹句に飛びついたが、絵画の修復の場面にはそれほど新味はなかった。次作以降に、ストーリーとどのように絡んでくるのか、期待している。

|

« 『読むJ-POP』 | トップページ | 『ピアノ・ブルース』  »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『報復という名の芸術』:

« 『読むJ-POP』 | トップページ | 『ピアノ・ブルース』  »