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2005年9月15日 (木)

『モンスター』

○2005年9月15日(木)
 『モンスター』 ジョナサン・ケラーマン 講談社文庫

 久々に、ジョナサン・ケラーマンを読んだ。
 小児臨床心理医のアレックス・デラウェアが主人公のシリーズ物である。

 日本の社会も、精神科医、カウンセラー、臨床心理士という職業がなじみ深いものになってきた。軽い鬱症状を訴える人から、統合失調症などの症状を呈する人も目につく。仕事柄もあるが、私もこのような症状をもつ人に接することが時折ある。
 精神科の医者にかかったらとか、カウンセルを受けたらなどと、アドバイスをする。精神的な問題といっても、病的な疾患から、単なる心理的な相談で対処できそうなこともあるが、その境界がよくわからない。まずは、精神科医に相談をしてから、そのアドバイスに従って・・・ということになるのであろうが、これが結構難しい。
 
 臨床心理医の仕事の内容を知りたいとネットで検索したら、医者ではなく、臨床心理士という資格の情報が数多くヒットする。
 時代の状況に合わせて、心理学やカウンセリングを学びたいとか、臨床心理士になりたいとする人たちも多く、実際に臨床心理士の資格を取得する人も年々増えているらしい。
 臨床心理士は、国家資格ではなく、文部科学省認可の財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定する資格である。1998年の創設後、2004年までの15年で、有資格者は約12,000人になるという。
 彼らは、臨床心理士とかカウンセラーなどという名称で、仕事をしている。
 この他にも、産業カウンセラーなどの資格もあるが、これも国家試験ではないようである。
 これに対し、精神科医は、医学部を卒業して国家試験を通り、2年間精神科の研修を受けることが必要である。日本では、患者さんの症状を聞いたあと、薬を処方するといった薬物療法が中心の精神科医が多く、精神療法を行う医者は多くない。精神療法が浸透しないのは、健康保険の点数になりにくく、患者はいわゆる3分間診療しか受けることができないというの実態のようである。
 これに対し、臨床心理士は、心理検査や心理療法を通して、心の問題の相談に乗っているのであるが、薬を処方することはできない。
 当然のことながら、精神科医や臨床心理士といっても、その資格者であれば誰でもいいというわけではない。精神科医と臨床心理士が、連携をとって、時間をかけて対処してもらうの望ましいようであるのだが・・・

 アレックスはどうかというと、現在は、臨床心理医の仕事より、もっぱらロス・アンジェルスのコンサルタントの仕事をしているようである。報酬をどの程度もらっているのか、分からないが、少なくともこの本では本業をしていない。
 俳優の卵に続いて、女性心理医のクレア・アージェントが殺される。2人とも、喉を裂かれ、目をつぶされていた。アレックスは刑事のマイロとともに、クレアの勤務先であるスタークウェザー病院を訪れる。殺人を犯した精神病患者を収容している病院である。
 クレアは、郡立総合病院の研究職を辞め、スタークウェザー病院に勤務している。病院の関係者からも、離婚をした夫の話からも、クレアの実像は浮かんでこない。
アレックスらは、クレアの同僚職員から、クレアが関わっていた患者アーディス・ピークが、クレアの死を予言していたという話を聞く。ピークは、16年前、一家4人を惨殺し、モンスターと名付けられた精神病患者である。
 しゃべることもなく、精神病院に収容されたピークは、果たして「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクターなのかという興味で話は進んでいき、ケラーマンらしい心理学的な知的な謎の解明となっていく。
 ストーリーの展開により、関心が拡散してしまって残念なのだが、クレアが連続殺人を犯した精神病患者を身近に観察し、のめり込んでいく動機が身につまされる。クレアの兄は近所の家族を惨殺している。
 このような兄をもった家族が世間の目にさらされるとき、どう対処していくのだろうか。
クレアの解決方法は、世間に心を開くことなく、殺人を犯した精神病患者の心を開いていくということだったのであるが・・・。

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