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2005年11月23日 (水)

『嗚呼!女たち 猥歌』『恋人たちは濡れた』『宵待草』

○2005年11月23日(水)

『嗚呼!女たち 猥歌』『恋人たちは濡れた』『宵待草』

 弘前の朝は、快晴、遠くに見える山並は少し雪をかぶっている。外にででも外気の寒さは感じないさわやかな朝である。ホテルを出て歩いて少しのところにスタジオ・デネカがある。
 第14回浪岡映画祭の最終日である。今日は、文字どおり、最終日である。
 浪岡町が合併をした青森市の教育委員会が、神代辰巳監督没後10周年として、神代監督作品である日活ロマンポルノ映画の上映を企画した映画祭の実行委員会に、補助金をださない、会場としていた中世の館も貸さないとした。その理由は、18歳未満の者が観ることができない映画祭は、市民の理解が得られないというのその理由である。
 実行委員会は、自分たちが観たい映画を観ることに映画祭の意義があるとして、神代作品の上映を決め、会場を弘前にあるスタジオ・デネガに移し、今年が最後の映画祭とすることにしたのである。
 最終日に上映する神代監督の映画は、3本である。

 まずは、内田裕也主演の「嗚呼!女たち 猥歌」。
 時代に乗り切れないロックンローラーを内田裕也が演じている。演じているというより疲れ切って、ふてくされたロックンローラーの内田裕也がそのままそこにいる。1939年生まれの内田裕也42歳の時の映画である。売れない鬱憤をはらすように、妻、風俗嬢、看護婦らとの愛欲の世界をけだるく生きていくロッカー、ジョージには物悲しさがつきまとっている。
 オノ・ヨーコとジョン・レノンが裸で抱き合うローリンストーン誌の表紙が時々、カットバックされる。新宿のロフトで、アナーキーをバックに歌うジョージ、当時のささくれ立つ時代のいらだちがきりきりと染み込んでくる。黒田征太郎や石橋蓮司が風俗の客役で、ゲスト出演をしている。彼らも、この頃、突っ張っていたのだ。自分はどうだったのだろうかと思うが、思い出さない。
 内田裕也の公式サイトというのがあった。http://www.uchidayuya.com/biography/4.htmlに、内田裕也の神代について語っていた。
”「神代さんにとってのテーマというのは、地獄だと思うんです。末路というか、自分の中の地獄というか…、そういうものに対峙するのか逃げるのかがテーマだと思ってますけど…」(ミュージックマガジン1981.11号「いま必要なのはしぶとく生き続けること 五木寛之×内田裕也」より)”

 2本目は、『恋人たちは濡れた』である。
 さびれた漁港の町の2つの映画館の間を、成人映画のフィルムを運ぶ仕事が、克の仕事である。5年ぶりに、故郷に戻った克だが、同級生たちには、かたくなに赤の他人であると、自己を否定する。映画館主の妻と深い関係になる一方、同級生光男のガールフレンド洋子に惹かれる。克は、洋子に、東京で起こした事件の話をする・・・。
 他愛もないストーリー展開の中に、克の告白から最期のシーンまでの砂浜でのシーンが、きらりと光る小品であった。

 これに対し、3本目の『宵待草』には驚いた。
 大正時代、浅成金代議士の息子、国彦(高岡健二)は、浅草の活動写真館の弁士見習いをしている平田玄二(夏八木勲)らのアナーキスト集団の仲間に入り、政界の黒幕の孫娘しの(高橋洋子)を身代金目的で誘拐する。しのは、かつて、国彦が温泉場行きの乗り合い馬車で出会った令嬢であった。
 身代金の奪取に失敗した玄二、国彦は、しのを伴って、追ってを逃れ、映画のロケ現場から気球に乗て逃げたり、汽車の貨物車両に飛び乗ったり、大胆不敵に銀行強盗をしたりの逃避行を続ける。
 大正時代のモダンな雰囲気がなんともいえずいい。『明日に向かって撃て』の日本版といってもいいし、『冒険者たち』の映像の美しさと共通する楽しさに満ちた映画である。
 空高く浮かんでいる気球に、煙たなびく蒸気機関車に、繰り返して流れる「宵待草」の歌、それに、和太鼓の使い方といい、この時代の気分を嗅ぎ取るすごさに圧倒された。
 音楽は細野晴臣である。
 最初の方に、国彦が馬に乗って、自転車に乗るしのを追うシーンがある。揺れ動く馬の背中から、カメラで追っているのだが、濡れ場のシーンよりも、ずっと官能的であった。裸になったり、セックスする場面よりも、官能的なのである。
 『宵待草』を観ただけで、弘前まできた甲斐があったと思った。

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