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2006年1月 1日 (日)

 『鴛鴦歌合戦』 

○2006年1月1日(日)

   『鴛鴦歌合戦』 マキノ正博監督

  待望していたマキノ正博監督の『鴛鴦歌合戦』(1939年)がようやくDVDで発売された。
  大晦日恒例の紅白歌合戦を観なくなって、何年経つだろうか。というよりも、大晦日にテレビを観ること自体しなくなった。暗くした部屋で一人、プロジェクターでDVDを観るというのが、恒例の大晦日の過ごし方である。
  家族の方は、大晦日には、紅白、正月には、芸能人がやたら馬鹿騒ぎをする番組を観ているが、このようなテレビに大事な時間を奪われるのは口惜しいというか、腹立たしくなるので、スポーツ中継以外はテレビを観ないことにしている。
  今年の大晦日は、庭掃除から、樋に詰まった落ち葉をとり、ガラス磨きまでと、自分としては、結構働いたので、夕食での一杯が効いて、早々と寝てしまい、目が覚めた時には、12時を回り、元旦になっていた。
  家人は風呂に入っているので、一人、年越しそばを年を越してから食べるということになってしまった。
  それから、やおら、スクリーンを下ろして、待望の『鴛鴦歌合戦』を観ることにした。
  冒頭、丁稚を連れた豪商の娘・おとみ(服部富子)が登場し、おとみを追いかける商家の若旦那連が、「おとみちゃん」と口説きの文句の歌を合唱し、おとみも歌でつれない返事をし、付き添う丁稚も歌で若旦那に引導ををわたす。このように、軽快で愉快な場面で始まるオペレッタ時代劇は、最期まで、この軽い楽しいのりの調子が続く。
  話は、至って単純。長屋に隣同士に住む貧乏浪人の浅井礼三郎(片岡知恵蔵)と、日傘を作って生計を立てている志村狂斎(志村喬)の娘のお春(市川春代)は気になる仲なのだが、おとみや武家の娘(深水藤子)らも、礼三郎に思いを寄せ、3人のさや当てが始まる。これに、ディック・ミネの殿様がお春に一目惚れしてしまったことから、大騒動が起きるという他愛もない話であるが、これまた、楽しさに溢れた映画となっている。
 
  この映画は、和製オペレッタ映画第1号といわれているが、解説によれば、「エノケンの近藤勇」(1935年)が日本のミュージカル映画の先駆作といわれているという。
  オペラはクラシック音楽、ミュージカルはポピュラー音楽と漠然としたジャンル分けがあるが、オペレッタもクラシック音楽で、これはオペレッタ?という気もするが、その区別はよく分からない。
  ネットで調べると、東京オペレッタ劇場の「オペレッタとは何か」http://operetta.jp/newpage1.htmlというサイトがあった。そこには、このように書かれていた。
 ”「オペレッタ(operetta)というのはオペラ(opera)の小規模なものを意味する指小語である。」”
 ”広辞苑には、
    オペレッタ【Operetta】 娯楽的要素が強く、軽快な内容の歌劇。独唱や合唱の歌に対話を交える。軽歌劇。小歌劇。
   国語辞典なので詳しい解説はもとより求むべくもないが、オペレッタの特徴のいくつかを端的に説明されている。しかし、実際にこの言葉はきわめて多義的に使われ、それらが指し示す音楽ジャンルにどのような共通点があるのか、明確に把握できない場合も少なくない。また、類似ジャンルであるオペラやミュージカルとの相違も、明確な線引きをすることは難しい。オペレッタに対するコンセンサスが音楽家の中でも一致していないのである。”
   ただ、”オペレッタという言葉はしばしば、「音楽劇」「歌芝居」と訳するのが適切だと思われる使われ方をすることがある。幼稚園や小学校の学芸会などで上演される創作オペレッタなどはこの意味合いで用いられる。”
 
  「鴛鴦歌合戦」を和製オペレッタとするのは、要するにこの最後の「歌芝居」という意味程度に過ぎないであろう。
   しかし、この映画は、このようなしかめつらしい議論をするにはふさわしくない、ただ、心底楽しめる映画なのかということである。
   ここに登場する人物は、恋のごり押しをする悪人役の殿様でさえ、ディック・ミネがさわやかに歌うのである。若き片岡知恵蔵は、歌は吹き替えとのことであるが、ルンバのリズムに乗って立ち回りをしたり、登場する人物が全員楽しげに演じている。
   黒沢明の映画の常連の志村喬も、軽いノリで歌っており、これが結構、味がある。
   1939年といえば、昭和14年である。
   昭和14年頃といえば、昭和モダン・ジャズ・英字8といわれた時代で、二村定一、エノケン、川田晴久、あきれたボーイズなどの、モダンな音楽が流行っていた頃である。詳しく、知るところではないが、庶民も、オペレッタ、ジャズなどを身近なものとして楽しんでいたような時代で、もしかすると、今よりも、ずっとモダンな時代であったともいえる。
   このような背景があったからこそ、『鴛鴦歌合戦』のようなモダンな映画が生まれたともいえる。この映画は、白黒であるが、傘がずらーっと並んでいる場面など、色鮮やかな傘に見えてくるし、これをカラーでリメイクすれば、面白いなと見入ってしまった。

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