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2006年2月 6日 (月)

『容疑者Xの献身』

○2006年2月6日(月)

『容疑者Xの献身』 東野圭吾  文藝春秋

 「このミステリがすごい!」の他、昨年のベスト・ミステリ・セレクションの1位を総なめした『容疑者Xの献身』をようやく読了した。評判を聞いていても、買いそびれてしまうと、読む気がおきない。
 今回、直木賞を受賞したということもあったが、ミステリ・マガジンの601号記念特集号の巻頭に、二階堂黎人vs.笠井潔として、2人の作家がこの本について書いている。
 面白そうな議論なので、この評論を読む前に、この本を読もうと思ったのである。
 離婚をして平穏に暮らしている母娘の二人が、金をせびりにきた元暴力夫を殺してしまい、アパートの隣室に住む高校の数学教師が二人の窮境を救うために、隠蔽工作を行うという倒叙形式で話が進んでいく。
 数学者として将来を嘱望されていた高校教師と、帝都大学で同窓であった探偵役の湯川助教授の知恵の絞り合い、さえない男の隣室の女性に対する恋慕心、殺人を犯してしまった母娘とそれを庇おうとする隣室の男、等々、面白い素材がちりばめられているにもかかわらず、何故か、小説的感興が沸いてこない。
 ミスディレクションもそれなりに、よくできている。途中の互いの心理の読み合いも面白いのであるが、話はそれをめぐって淡々と進んでいく。
 知恵比べならもっと知的な興奮を呼ぶものになるだろうし、高校教師のストーカー的偏愛を描くのであれば、極めて現代的主題の小説になったであろうし、このような高校教師に庇われることにより、身動きならぬ状況に陥った母娘というのであれば、これまた、面白いものになったのではないかと、読後感は消化不良気味としかいいようがない。
 佳作ではあるが、ベスト1だの、直木賞だと、もてはやす小説なのかというと、疑問である。
 もしかすると、現代のミステリの指向性なのかもしれないと思うと、こちらの感性の方がずれているのかと考え込んでしまった。
 とりあえず、これから、二階堂黎人、.笠井潔の論客の文章を読んでみようと思っている。

 
 

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コメント

 時々見させて頂いていたのですが,初めて書き込みさせて頂いておいります。

 容疑者Xの献身は,まだ読んでいないのですが一読しようと思っています。私は東野作品については「手紙」を最初に読んだのですが(先生はお読みになられましたか),
あれで激しい拒否反応が出てしまい,以後彼の作品を読もうという気が起きません。手紙は,大変評判の良い作品だったのですが・・・。
 犯罪被害者と加害者の被害後の生活,そして和解に至るまでを描いたものなのですが,凄く「きれい」で読んでいてイライラしました。事の本質はそういうところにあるのではないのでは,と。被害に遭った遺族が加害者の側を憎み,加害者の方は世間の冷たい視線を浴びつつ苦しみつつ生活し、最後は憎んでいても何も変わらないのだ~と両者が和解というお定まりのパターン。言いたいことは沢山あるのですが,自分は汚れていない場所に居て,高見から見下ろしているようでとても嫌でしたね。作品を書くあたって,彼は少しでも被害者の実情やその気持ちを聞いたり調べたりしたのかしらん、と。

 今回の作品は直木賞受賞ということもあり、読んでみようと思ってみます。

 またコメントさせて頂きます。
 

投稿: 夢見る・・・ | 2006年2月12日 (日) 14時10分

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