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2006年3月24日 (金)

『あなたに不利な証拠として』

○2006年3月24日(木)

『あなたに不利な証拠として』 ローリー・リン・ドラモンド 早川PMB

 ルイジアナ州バトンルージュ市警察に勤める5人の女性警官キャサリン、リズ、モナ、キャシー、サラを主人公とする10編の短編からなっている。
 原題の”Anything You Say Can and Will Be Used Against You”はミランダ・ウオーニングの用語である。
 アメリカの刑事物の映画を観ていると、犯人を逮捕した刑事が、紙切れを取り出して、犯人に対し、「おまえには、黙秘権がある。おまえが話すことはおまえに不利な証拠とされる可能性がある。」と告げる場面に出くわす。この告知が、ミランダ警告といわれるもので、この告知がされていないと、その後の刑事手続きが違法なものとされてしまう。

 職務遂行中に犯人を射殺してしまったキャサリン、パトカーに乗務中に、交通事故に遭い、片足を失ってしまったモナ、銃を構えて、現行犯と対峙してい最中に、父親から受けた虐待がフラッシュバックし、父親の幻影をみてしまうモナ、男に襲われたのに、警察からは自作自演とされてしまった女性の訴えが正しいと思っているキャシーと、5人の女性警官の行動とその内面が、ときには一人称で、ときには三人称でつづられている。
 数頁のものから、中編に近い短編と、様々な形式の物語であるが、感傷に陥らず、淡々と描かれている様は、ハードボイルドである。 
 ミステリを犯罪に関する謎とするのであれば、この短編集はミステリの範疇の小説といえるのだが、ここにはすっきりとした謎解きも、解決もない。それだからこそ、登場する女性警官たちの解決のない底なしのような思い、追い詰められた状況が真に迫ってくる。

 「どう思われようとも、本音でしゃべってしまおう。」という原題の意訳がふさわしい短編集である。
 気が早いのだが、今年の収穫の1冊である。

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 ルイジアナ州バトンルージュ市警に勤める5人の女性警官の仕事と日常生活を描く。2... [続きを読む]

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