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2006年4月26日 (水)

『花崗岩の街』 

○2006年4月26日(水)
 『花崗岩の街』 スチュアート・マクブライト 早川PMB

 このところ、早川PMBから出る本が昔の映画化の原作やミステリばかりでで、魅力的な新しいミステリがなかったので、どうなったのかと思っていた。
 歴史のあるこのミステリ・シリーズの魅力は、新しいミステリを紹介するという使命にある。近時は、発行部数も少なく、値段も高くなっており、このシリーズの本を置いている書店も少ない。というわけで、このシリーズは、馴染みの書店で、取り置きしてもらっている。
 しかし、食指のわく本がこのところなく、編集者は何をしているのかと思っていたところである。そこに、ローラー・リン・ドラモンドの『あなたに不利な証拠として』に続いて、スチュアート・マクブライドの『花崗岩の街』と、このシリーズらしい、いぶし銀ともいえるミステリがでてきた。

 スコットランドのアバディーンが舞台の警察ミステリである。スコットランドといえば、贔屓にしているイアン・ランキンのリーバス警部シリーズの舞台はエジンバラである。
 アバディーンは、スコットランドの首都エジンバラ、綿工業や造船業で栄えた次グラスゴーに次ぐ第三の都市であり、人口21万人の街である。
 リーバス警部シリーズで、エジンバラは馴染みの都市となってきたが、聞いたことのあるような、ないような、馴染みの余りないアバディーンという都市を調べてみた。
 スコットランド北東部にある港町で、アメリカ、カナダやオーストラリアなどの国に沢山あるアバディーンという地名は、スコットランドのアバディーンから由来しているとのことであるから、その昔、この街から、人々が世界中に流れていったのであろう。

 主人公は、アバディーンのグランビア警察本部のローガン・マクマレイ部長刑事である。凶悪犯に襲われて重傷を負い、1年間休職していたローガンは、復帰早々、殺害された幼児の発見現場に行くことになる。冷たい雨が降り続ける街では、幼児が誘拐される事件が続発し、警察は批判の矢面に立たされる。おりしも、新聞には、警察関係者のもつ捜査情報の記事が載る。ローガンは、幼児の検死をする元恋人のイソベルとは気まずい思いをしながら捜査を続けるのだが、情報漏洩の疑いをかけられ、身の潔白を証明を迫られる。
 漏洩記事を書いている新聞記者ミラーは、ローガンに、港で膝を切断された発見された肢体の捜査情報の提供と引き換えに、幼児殺害の捜査情報の提供をしないかと持ちかけてくる。
 リーバス警部シリーズのような一匹オオカミで、ハードな主人公ではないが、連続して起きてくる事件を、きちっと解決するローガンというより作者のお手並みはなかなかのものである。容疑者とされる者に対する市民の仕打ちに対する複雑な状況の描き方などはうまいし、様々な感情のさや当てもあるし、サスペンスあふれる活劇シーンもありとの盛りだくさんな内容を一気に読むことができた。
 玉つぶしとあだ名される強面の府警ワトソン、絶えずグミを口にし、ローガンに厳しくあたる上司のインスク警部、ひとくせあるが透徹しているスティール女警部らと登場人物も多士済々であり、これからの展開に期待をもたらす新シリーズの登場である。

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