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2006年5月21日 (日)

 『文化財保存支援機構』

○2006年5月21日(日)
  『文化財保存支援機構』
 一足早い、台風の影響も収まり、さわやかな日曜日の朝、清澄白河の駅で地下鉄を降り、深川の町並みを抜けて、東京都現代美術館にでかけた。
美術館では、カルチエ・コレクションの展覧会が開かれているが、今日、来たのは、この展覧会が目的ではなく、地下の研修室で、NPO法人JCP(文化財保存支援機構)の定例総会と事業報告会が開かれるからである。
 JCPは、文化財の保存・修復を目的としている。文化財の技術者や専門家を中心メンバーとするNPO法人なのだが、縁あって、門外漢の私は、6年前の発足時から理事をしている。
 午前中の定例総会では、決算、予算、今年度の事業計画等の審議がおこなわれた。それなりに、事業規模が拡大しているが、慢性的な資金不足に悩んでいる。積極的な活動を展開するためには、広報活動を充実する必要があるのだが、そのためには先立つものが必要だということになり、堂々巡りの議論となりがちである。
 午後に開かれた事業報告会は、いずれも、JCPの会員が携わった文化財保護活動の報告である。
 最初の報告は、鷹島海底遺物の保存事業である。13世紀後半に、蒙古が日本に襲来し、神風が吹き、襲来した蒙古の船が沈んでしまった話はよく知られているが、沈んだのは鷹島付近で、その船の数は4400隻と聞いて驚いた。1隻に何人乗っていたのか分らないが、相当の数の人が乗っていたのであろう。全員、海の藻屑になったのではなく、上陸した者もいるだろうし、陸では壮絶な戦いが行われたはずであるが、このあたりの知識は全くない。今度、機会があったら、蒙古襲来の書籍を探してみようと思いながら、話を聞いた。海底から見つかったのは、鉄製品、非鉄製品、漆製品などであるが、いずれも、腐食が激しい。保存修復といっても、文化財の場合には、新品のように修復するのではなく、現在の状況から、腐食等が進行しないように処置することが多い。
 海底遺物については、特に、海底で見つけたということが重要なので、砂などを取り除くクリーニングをして、腐食が進行しないように、脱塩処理をすることにしたとのことであった。
 2番目の報告は、台風による高潮被害を受けた観音寺市の郷土資料館の文書の緊急保存措置である。資料館は基礎部分から140cm浸水したために、展示中の資料や、ロッカーに保存していた資料が水損したのである。水浸しになったといっても、ただの水ではなく、汚水も混じっている。放っておくと、すぐに腐ってくる。腐敗の進行を止めるにはまず冷凍するのが手っ取り早く、その上で保存措置を行うことになるが、一般にある冷蔵庫も業務用の冷蔵庫も、食品保存のためのものであるが、水損した資料を入れるには衛生上の問題があるので使えない。
 緊急措置として、どこにであるコピー用紙を使って、資料の一枚、一枚の間にはさみ、湿りを取る。キッチン・ペーパーを使ってもいい。
状態の悪い資料については、一枚一枚、水に浸して洗い、キッチン・ペーパー等に挟み、乾かす作業をする。気の遠くなりそうな作業だが、この方法は素人でも、応用できる。
 我が家でも、雨水が漏水して、本棚一つが濡れてしまったことがあった。一枚、一枚というわけにはいかなかった、乾かしてもぼさぼさになってしまったが、雨水はきれいであったので、読むのには差し支えなかったが,汚水であれば捨てるしかなくなる。新潟の中越地震でも、蔵などが崩壊して、雨ざらしになってしまったものも多いという。
   最後の報告は、中国が敦厚で行っている壁画の修復事業への技術協力である。東京文化財研究所が中国と行っている壁画修復に関する共同研究に、JCPは技術面で協力している。敦厚には、多くの洞窟があり、壁画がある。現在、修復を行っているのは、53窟であるが、水没したこともあり、非常に状態が悪い。これまで行われていた修復も試行錯誤している。修復の方法を見極めていくことは難しいものだということをあらためて認識した。

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