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2006年5月18日 (木)

『銀河のワールドカップ』

○2006年5月18日(木)
  『銀河のワールドカップ』 川端裕人 集英社

「以前、花島は自分のチームを自分の考えに染めた。たまたま手にしたカードを徹底的に利用し勝つためのサッカーにチームを鋳込んだ。その結果、優秀な選手の将来を奪ってしまった。
 このチームは型にはめない。チームがチームとして動いていく方向を読み、形を整えてやりたい。うまくすればそれだけで全国を戦える潜在能力を持っている。
 だから、試合中のコーチングは控える。敵のコーチは喉を嗄らしているが、あんなものはエゴの押しつけなのであり、自分は選手を信じるのみだ。」(p63)

 明け方、目を覚ましたら、昨夜見ていたテレビがつけっ放しになっていた。雨の中のサッカーの試合である。ホテルの窓から外を眺めると、雨が降っている。昨夜、私が泊まったホテルは横浜だが、テレビに流れる試合が行われているのは、パリのサッカー場である。
 ヨーロッパ・チャンピオンズ・カップ、バルセロナとアーセナルの試合であった。普段は、朝にテレビを観ることはないのだが、眠いとおもいながらも、見入ってしまった。
 カーンに代わって、ドイツの代表の座をうばったアーセナルのゴール・キーパーが早々に、レッド・カードを受けて退場処分を受けてしまった。それでも、10人で戦うアーセナルが1点をリードして、前半を終えた。
 雨のせいか、ボールのコントロールに苦労していたバルセロナが、後半になってようやく2点取り、逆転した。
 ワールドカップの試合も、この時間帯なのだろうかと、ベッドのうえで朦朧としていた。
このような朝を迎えた日に、読み終えたのが、『銀河のワールドカップ』というのも、何かの因縁なのだろうか。
 久々に興奮をしたスポーツ小説である。あさのあつこの『バッテリー』を読んだときに、主人公である天才肌の少年が、ピッチャー・マウンドで、ボールを投げる時のフィジカルな感覚を描き切った作者の文章の的確さに驚いたが、この小説に登場する少年たちの感じるサッカーの世界への皮膚感覚の鋭さには言葉を失ってしまう。正確にいうと、皮膚感覚の鋭さを描ききる川端の筆力のすごさである。
 登場するサッカー少年は、小学生である。少女が2人に、三つ子の少年たちの8人が、スペインでの世界大会を目指して、8人制サッカーの試合を勝ち抜き、スペインにでかけるが、決勝であっけなく、負けてしまう。少年たちがスペインにやってきた目的は、レアルのプロ選手と戦うことであった。
 小学生という設定であるが、子ども達の運動能力も思考のしかたも、どうみても小学生のものとは思えないのだが、作者の筆致の強さについ納得してしまう。
 子ども達のコーチを引き受ける花島は、指導した子どもの怪我に責任を感じていた。そして、コーチの座を負われたのは、子どもへのセクハラ疑惑のためであった。ここらへんの描き方も押さえ気味で、非常にうまく、説得力がある。
 ワールドカップを前に読む本としてもいいし、サッカーをする子どもやコーチにも是非読んでほしい本である。
 

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