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2006年8月18日 (金)

『殺人マジック』

○2006年8月18日(金)
  『殺人マジック』 ジョン・ケース  ランダムハウス講談社文庫
 
 息子が小学校の3-4年生の頃であっただろうか、妻と息子が、幕張メッセで開かれたテレビ・ゲームのイベントに出かけたことがあった。私は、家でのんびりと本を読んでいた。午後2時過ぎ、妻から、息子とはぐれてしまい、見つからないとの電話があった。
 とりあえず、会場の担当者と警察に連絡して、探してもらうように指示をして、家で待機をしていた。妻は、携帯電話を持たない主義だし、子どもにも携帯電話を持たせていない。子どもが私の携帯電話の番号を覚えていないので、子どもから我が家に電話があるかもしれないと思い、家をあけないことにした。
 午後5時を過ぎて、外が暗くなってきても、まだ、見つからないと、妻から再度電話がかかってきた。幕張メッセの会場も、すでに閉館し、片づけが始まっているという。
 となると、事故か誘拐しか考えられない。我が家から幕張メッセまでは、車で1時間以上かかる。とりあえず、子どもの写真を持って行かなければと思い、最近の写真を探しだし、出かけようかと思っていたら、妻から電話があり見つかったという。子どもは、妻を探して、会場と駅の間を行ったりきたりし、最期、駅のそばの交番にいたというのである。会場のそばの交番との連絡がうまくされていなかったのも、発見が遅れた理由のようであった。いずれにしても、小さい子どもがいなくなったときのショックは言葉では言い尽くせない。
 この小説の主人公のアレックスも、双子の子どもが誘拐される。場所は、メリーランド州にあるエリザベス一世時代を再現したアミューズメント・パーク、槍で戦っている馬上の騎士を見ていて、一瞬、目を離したすきに、双子の子ども達が消えてしまったのである。

 アレックスは、「九割方の事件はでは、子ども知っている人物が犯人なんですよ。ええ、九割方の事件で犯人は親のどちらかです。」といわれ、ポリグラフの検査を受けることになったり、インターネットで調べると、「誘拐された子どもの多くが、半数以上が、行方不明になったから三時間以内に殺害されている」ことを知ってしまう。
 誘拐された子どもの親たちのために開かれた相談センターの担当者などのアドバイスを受け、必死の捜索活動をするが、時間を経過するにあたって、事件も風化し、家族や捜査関係者も次第に遠い存在になっていく。

 ここらあたりの誘拐事件をとりまく世界や、アレックスの焦燥感、周囲の反応に微妙に傷ついていくあたりはよく描けている。

 一人を誘拐するのでも大変なのに、何故、手のかかる双子を誘拐するのかということから、アレックスは、過去の双子の誘拐事件を調べ出すあたりから、少し話が一直線になって単調になっている嫌いがあるが、双子とマジックとを絡めての話の展開は興味がつきない。
 ” わたしがあちこちのショーをはしごしているのは、自分のパーフォーマンスに新しい流行を取り入れようと思ってのことだが、あなたの場合は・・・驚いたな、殺人鬼を捜してのこととはね。”p306
 ”古代のマジッシャンは単なるエンターテイナーではなかった。社会のなかで、もっと高度な役割を果たしていた。何しろ、一般的にはそう考えられている・・・現代のマジッシャンは、もとをたどれば僧侶やシャーマンだったと”p315

 キリスト教や仏教とマジックに関する蘊蓄も飛び出してくる。
 その真偽を確かめるには、聖典に当たってみるほかないのだが・・・・

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