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2006年10月 6日 (金)

『名もなき毒』

○2006年10月6日
    『名もなき毒』 宮部みゆき 幻冬舎

 玉の輿という言葉に対し、逆玉の輿という言い方がある。要するに、身分の高い家や資産家の家に嫁に行くことが玉の輿であり、逆玉の輿は、資産家の家の娘に婿として入ることをいうであるが、玉の輿という言葉に対し、逆玉の輿のそれには、揶揄的な意味合いが込められている。心の底に、羨望の気持ちがありながら、男たる者は自分の力でつかまなければと陰口をいったりする。
 といいながらも、自分の職場に、会社の社長の息子が配属されてきたりすると、日頃の大口たたきも、ころっと変わったりする。
 宮場みゆきの『名もなき毒』の主人公は、今多コンツエルンの会長の娘と結婚をしてしまった杉村が主人公のミステリである。会長が、出版社に勤めていた杉村が娘と結婚をする条件としたのは、杉村が妻を担いで、未だグループの経営権を狙うなどの野心をもたないことと、会社の総本部に入り、社内報を作っている編集部に入ることであった。
 このような経緯で婿となった杉村の会社内での所作の難しさを、宮部は軽妙なタッチで小気味よく書いている。
 冒頭、男がコンビニので買った紙パックに、青酸カリの入ったウーロン茶を飲み、死亡する。
 一方、編集部では、アルバイトとして雇った女を解雇した。雇用時に、本人が申告していたほどの編集経験はないうえに、ミスを指摘すると、言い返すようになり、さらに、攻撃的になってきたために解雇したのである。解雇された女は、会長宛に、セクハラを受けたとの投書をしたきた。
 女の履歴の嘘を調べるために訪れた探偵の家で、杉村は、青酸カリで殺された男の孫娘と出会う。
 と事件は進行していき、その間に、杉村の妻が計画する引っ越しの話があり、土壌汚染の問題が登場したりと、現代的な題材が盛りだくさんである。
 しんどい話をしんどく語られるのもしんどいなと思うのだが、話が上滑りとなっている気がして仕方がなかった。

 ”事件は、それが煮えたぎっているさなかには、さまざまな感情や思惑から生じる磁力で、関係者を互いに引き寄せる。共闘感が、そこにはある。が、どういう経緯であれ決着を見ると、その磁力は消える。そして、今度は斥力が生まれるのだ。”p461

 非常に共感できるいいフレーズで、好きなのだ、この物語からはこの感情が湧いてこないのはどうしてなのだろうか。
   

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