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2006年10月28日 (土)

 『まほろ駅前多田便利軒』 

○2006年10月28日(土)
     『まほろ駅前多田便利軒』 三浦しおん 文藝春秋

 『まほろ駅前多田便利軒』で、直木賞を受賞した三浦しおんは、村上達朗さんが主宰するボイルド・エッグズからデビューした作家である。
 欧米の本に接していると、作家が著作権エージェントを通じて本を出すという話がしばしば登場する。日本では、独立した編集者が出版社に本を持ち込み、本を出版するということはよくある。また、タトル商会のように、欧米の本の著作権を仲介するエージェントはあったが、日本の作家のエージェントというのは聞いたことがなかった。
 村上さんは、早川書房を退職すると、ボイルド・エッグズを立ち上げ、著作権エージェント業を名乗った。ボイルド・エッグズのサイトをみると、一定のお金を払って、原稿を送ると、村上さんは、編集者の立場で、原稿を読み、助言するとある。そして、これと思った原稿を出版社に持ち込み、出版を働きかけるという。
 ボイルド・エッグズのサイトhttp://www.boiledeggs.com/ をみると、村上さんが手がける作家達のコラムが並び、手がけた作家達の近況がでてくる。
 数年前に、話題になった三浦佑之の『口語訳・古事記』(文藝春秋)が村上さんの手になる本と聞いたときに、村上さんの守備範囲の広さには驚いた。
 三浦シオンが、その三浦佑之の子どもであるということは、最近まで知らなかった。
 
 東京の南西部に、神奈川に着き出すような形で存在するまほろ市の駅前で、便利屋を開業する多田のもとに、高校時代の同級生の行天が転がり込み、2人の便利屋生活がおりなす連作短編集である。息子を装って認知症のおばあちゃんの見舞いにでかけたり、意図的にバスを運休をしているのではないかと疑う依頼者のために、バスの運行状況を調べたりと、忙しく働く多田と、高校時代に事故で小指を失った過去をもつ行天がおりなすミステリ風味の物語が人情話風に展開していく。後味のいい小説である。
 町田に近い、横浜の郊外に住み、時折、町田に出かけていたことがある。都会と田舎が奇妙に混在する街、町田を思わせるまほろ市の様子を思い浮かべながら読んでいると、ノスタルジックな気分になった。

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