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2007年1月26日 (金)

『空飛ぶタイヤ』 

○2007年1月26日(金)
   『空飛ぶタイヤ』 池井戸潤  実業の日本社

 大学の推理小説同好会の後輩である池井戸潤の『空飛ぶタイヤ』が直木賞の候補となった。池井戸君は、大学卒業後、銀行員となった。1998年、『果つる底なき』で第44回乱歩賞を受賞した後、銀行を退職し、小説を書くかたわら、ビジネス書を書いたり、企業のコンサルタントもしているらしい。数年前、OB会で会ったときには、大型バイクを買い、それに乗って、仕事場に通っていると話していた。
 『空飛ぶタイヤ』の評判がいいとは聞いてはいたが、まだ、読んでいなかった。直木賞のを受賞するまえに、読まねばと思い、購入したものの、読み出す前に、芥川賞、直木賞の発表の日がきてしまった。
 残念ながら、今回の直木賞は受賞作なしという結果であった。

 運送会社のトラックが脱輪事故を起こし、飛んできたタイヤが通行中の母子を直撃し、母親が死亡する。
 事故の原因は車両の整備不良にあるとする自動車メーカとタイヤと一緒に外れたハブに問題があったのではないかと疑う運送会社の社長を軸に話がスリリングに展開していく。取引先から取引を停止され、銀行から融資金の返済を迫られ、翻弄される小さな運送会社、財閥系自動車メーカーの社内の確執、さらには、子どもが通う小学校の騒動と盛りだくさんである。

 このストーリーで分るように、『空飛ぶタイヤ』は数年前に起きた三菱自動車の事件が下敷きとなっている。従って、メーカー側の責任が暴かれていくであろうということは容易に想像がついてしまうのである。
 現実の事件を超えて、小説を書いていくということは、しんどい作業である。この事実に寄りかかった小説で、直木賞を取るのは難しいなというのが、読み出したときの正直な感想であった。
 それでも、大事故を引き起こした会社の社長は、PTAの会長をもやめる必要があるのかというやりとりは、現代社会の縮図にもみえてくるあたりのうまさが冴えて、最後まで一気に読ませる力をもっていた。
 読後感としては、直木賞に値するのではないかという気もしないではなかったが、すでに忘れ去れつつある企業の不祥事が直木賞の受賞により再度脚光を浴びるのはどうかという配慮が選考にあたって働いたのではないかと気がするというと、邪推であろうか。
 
 池井戸君の力からして、もう少し、違った小説で直木賞を取ってもらった方がいいのではないかと思っている。

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