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2007年1月16日 (火)

 『Gファイル 長嶋茂雄 黒衣の参謀』

○2007年1月16日(火)
    『Gファイル 長嶋茂雄 黒衣の参謀』武田頼政 文芸春秋

 日本のプロ野球をつまらなくしたのはジャイアンツである。ジャイアンツが、全国紙である読売新聞の拡販のための手段であるという宿命がもたらしたものである。
 立ち後れてしまったのは、プロ野球だけではない。

 ”世界の競技スポーツ界は、一九八四年のロス五輪で大きく変貌したのですが、日本はこの流れからすっかり取り残されています。日本はこの流れからすっかり取りのこされています。個人競技スポーツもチームスポーツも、ひとりの指導者や管理者がすべてをやらなければならないような時代はもう過去のことです。米国では、マネージャー、弁護士、担当医、テクニカルコーチ、スポーツ心理学者、トレーナーなどがチームを組んでひとりのアスリートを一級の商品に仕上げていくんです。同じように陀リーグ、NBA、NFLなどの球技でもプロのエキスパートをそろえて徹底した分業体制を敷いている。日本では考えられないじゃありませんか。”                                                                 (p24)
 1987年、世界陸上ローマ大会のコメンテーターとして、ローマにきていた長嶋茂雄に、アメリカの最新スポーツ事情を話しているのは、河田弘道である。
 河田弘道、1947年生まれ、日本体育大学を卒業後、アメリカのブリンガム・ヤング大学に入り、米国のスポーツ運営に関わるようになり、西武鉄道の堤義明の特命を受けて、影で、プリンスホテル野球部の立ち上げ、西武ライオンズの優勝を支えた男である。

 1980年、ジャイアンツの監督を解任された長嶋は監督の復帰を願い続け、渡邊恒雄の力により、監督に復帰したのは1992年のことである。
 監督に復帰するにあたり、長嶋は、河田に、ジャイアンツのフロントに入ってチーム作りに協力してほしいと願う。
 河田は、ジャイアンツの状況分析し、現場とフロントの意思疎通ができていないこと、選手の心身のメンテナンスの立ちおくれ、内部情報が報道されてしまう情報管理の不徹底さであるとしていた。
 河田は、3位で終えた長嶋ジャイアンツの再建に協力するにあたり、手伝う条件は、組織を変えて、監督が信頼できるフロントをつくることであり、長嶋が経営者兼監督として、球団の全県を握ることであるとした。
 長嶋は監督兼常務取締役編成担当としてフロントと現場を統括することになり、河田はジャイアンツの内部や相手チームのデータを集め、分析し、Gファイルと称する報告書を、深夜や早朝に、長嶋のもとにファックスで送っていたのである。
 この本は、長嶋にファックスされたGファイルをもとに、長嶋ジャイアンツの軌跡を追いかけ、検証する。
 河田の長嶋への報告の文章は、河田の思いは別として、何となくおちつきが悪い。あるときは直截であるが、あるときは非常に婉曲で、報告書としてはつたなさを感じてしまう。そういう意味では、「Gファイル」という名称は大げさないいかたである。
 しかし、毎日、この報告を読む長嶋はどの程度理解し、影響を受けていたのであろうかということを考えると、不思議な感じがしてくるのである。孤独な長嶋を支えていたことは間違いないのであろうが、長嶋がどういう思いで、この報告を読んでいたのかは分らない。そういう意味では、「Gファイル」というもったいぶった名称も至当なものにみえてくる。

 この本の面白さは、Gファイルを狂言回しとして、著者である武田頼政のGジャイアンツの陥っている組織としての病弊の切り方である。
 野村ID野球はフェイクであるとか、ヤクルトとジャイアンツの遺恨試合の中、長嶋が槇原に指示した死球をコーチの堀内が伝えなかった、山倉の指示により、死球を与えた槇原が、死球をきっかけに、崩れて逆転をされてしまうあたりの各人の心の動きは小説さながらの面白さである。
 
 河田を黒子とする長嶋ジャイアンツは、フロント、コーチの思惑により、崩壊していく。長嶋が頼りにした渡邊恒雄も、渡邊にとっては、ジャイアンツは読売新聞という権力機構を維持するための手段の一つにしかすぎないという現実に、河田は長嶋と決別することになるが、長嶋はそれでもジャイアンツという御旗をすてきれないでいるのである。

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