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2007年1月12日 (金)

 『図書館戦争』

○2007年1月12日(金) 

  『図書館戦争』有川浩 メディアワークス  

   数年前のことである。娘が通っている学校の図書室を覗いたことがある。授業参観に飽きて、教室の隣にあった図書室に入り込み、書架に並んでいる本を眺めていたら、「バトル・ロワイヤル」がおいてあるのに気が付いた。 子ども同士が殺し合いをする小説ということで、大人たちが非難の声をあげ、国会でも、議員がしたり顔で問題にしていた。 子ども同士が自己の生存をかけて殺し合うというシチュエーションだけをみると、子どもに読ませるのはもってのほかと思うかもしれないが、実際に、読んでみると、それとは印象は全く異なり、殺し合いをしなければならないという苦しみが至極自然に描かれており、そのつらさを身にしみるヒューマンな小説であった。 声高に非難を浴びせていた人達の多くは、この小説を読んでいなかったと思われたし、読んでいても、表面的な事象に目を奪われて、小説を読みこなすことができない人たちの集団にすぎないと思っていた。 司書の先生の話によると、生徒のリクエストに応じて購入したが、上記のような批判があるということを記載した用紙を挟み込んであり、読む者に注意を喚起しているとのことであった。  有川浩の『図書館戦争』の冒頭には、図書館の自由に関する宣言が書かれている。 一、図書館は資料収集の自由を有する。 二、図書館は資料提供の自由を有する。 三、図書館は利用者の秘密を守る。 四、図書館はすべての不当な検閲に反対する。  図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまでも自由を守る、とのスローガンが掲げられている。  最初の一から四については見たことがあるが、最後のスローガンは「図書館の自由に関する宣言」にあったかなと思いながら、この本を読み始めた。 章立ても、一から四のタイトルで始まり、スローガンで終わるようになっている。  笠原郁は、22歳、念願の図書館に採用されて、毎日軍事訓練を受けている。 メディア良化法が施行され、メディア良化委員会は、公序良俗にハンする書籍・映像作品・音楽作品などを検閲する権限を持つようになり、その示威行動が激しくなるに応じて、これに対抗する図書館も防衛のために警備隊をもつに至る。 郁は、こどもの頃、大好きな童話の完結編を買うために発売日に本屋にでかけ、その本を手に取った瞬間に、メディア良化特務委員が現われ検閲を始めた。郁が手に持つ童話も問題図書であるとして取り上げられようとされるところを、関東図書隊員の青年に助けられた。以来、郁は名も知らぬ図書隊の青年にあこがれ、図書館防衛隊に入隊したのである。 メディアの良化と図書館の自由の闘いは熾烈を極め、メディア良化法を指示する政治結社が日野市立図書館を襲撃し、図書館員に死者12名を出す大惨事も生じている。  この本は、メディアの良化と図書(館?)の自由の対立構造が実力行使に転化していくということをすんなりと読者が受け入れることができるかどうかが、この本を面白いと捉えるかどうかの分岐点となる。 もっとも、この本は、郁のあこがれの図書隊員を探すと青春小説、その昔あったテレビのスチュワーデス物(今では、アテンダントというのかもしれないが)の成長物語の色彩の強い、軽い読み物になっている。その軽さ、面白さが若い人に受けいられている理由である。 有川浩という名前から男だとばかり思っていたが、「ヒロ」と読む女性だということを奥書をみて、始めて知った。(カバーの表にも「Hiro」と書かれていた。) このところ、隣町が消えたり、隣町と戦争がはじまったりとする思いがけない状況設定のエンターテイメント小説が目につく。 ライトノベル風な物語が多いのだが、ここから我々の生きる現実へ鋭い刃を突きつけるような小説が現われてくるようになると、小説の未来は明るい。

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