« 『ロング・グッドバイ』 | トップページ | 『狼花 新宿鮫Ⅸ』 »

2007年4月13日 (金)

『神奈川県立近代文学館』

○2007年4月13日(金)『神奈川県立近代文学館』

 20数年ぶりに、横浜の港の見える丘公園にでかけた。13日の金曜日の昼下がり、元町中華街の駅から、急坂を上がっていく。元町の通りの港側から港のみえる丘公園となっっている。その昔、夜な夜な、中華街にあるバーで飲み、バンドホテルに遊びにいったりしていた。そのころの記憶では、港のみえる丘公園は、上の本牧の方の港の景色を眺めることができるあたりだけだったと思うが定かではない。
 公園の奥の方に、神奈川県立近代文学館がある。
 文学館の入り口にたどり着くと、館長の紀田順一郎さんが迎えてくれた。
 慶應義塾大学の推理小説同好会は、13日の金曜日に総会を開くという13条からなる会則をもっていた。もっていたというのは、現在も、この会則が存続しているかは定かではないからである。
 私の世代から上のOBは、ここ10数年、この会則に則り、13日の金曜日の夜に集まっている。13日が金曜日という月は、毎年、1-2回ある。今年は、4月と7月に集まることになっている。
 いつもは、銀座にある同窓会のためのメンバーシップ制のクラブで、夜に開くのであるが、今回、横浜に集まることになったのは、同好会のOBが保管していた木々高太郎、江戸川乱歩らの直筆の原稿を文学館に寄贈するためである。
 直筆原稿の外に、エラリー・クイーン(マンフレッド・リー)、E・Sガードナーの署名の入った英文の書簡や乱歩賞受賞直後の仁木悦子からの葉書もある。
 英文の書簡にはレターヘッドがついている。クイーンのものには「QUEEN」というペンネームが、ガードナーのものにはサボテンの絵が印刷されている。レターヘッド付きの用紙に、タイプライターの本文と本人のサインというように、欧米の作家らしい風情がある。
 仁木悦子の葉書は、乱歩賞を受賞した直後のものである。差出人の住所として、仁木がカリエスで入院していた国立療養所となっている。
 原稿を保管していたのは、現在、テレビ番組の制作会社を経営している川村さんである。川村尚敬さんは、ミステリ・ジャンルでではNHKで放映された『新宿鮫』のプロデュースをしていたが、現在は、演劇がらみの番組をつくっている。川村さんが、学生時代に、同好会の機関誌「推理小説論叢」第13葺の編集に携わった。第13葺を、大学の創立100周年記念号としたので、クイーンやガードナーに機関誌に掲載するお祝いのメッセージを依頼したのである。クリスティからはこなかったということだが、クイーンとガードナーのメッセージは、昭和33年に発行された「推理小説論叢」第13葺に掲載された。
第13葺には、このほかに、木々高太郎、江戸川乱歩、日影丈吉らの文章も掲載されている。これらの原稿の所在が長らく不明であったが、数年前、川村さんが家の中の整理をしていたところでてきたとして、OB会に持参してきた。
 実は、私も、創刊当時の論叢に掲載された文章の原稿をOBから預かっていた。木々高太郎、江戸川乱歩、日影丈吉のものもあったのだが、長沼弘毅の原稿があった。長沼は、確か、ビクターの会長にもなった財界人であったが、シャーロッキアンとして有名で、何冊もホームズに関する本を書いていた人である。
 これらの原稿を寄贈しようということになり、何度か、OBの間で話し合った。大学の図書館には、雑誌「宝石」が揃っており、同好会の後輩が『宝石総目録』をつくっている。池袋にある「ミステリー資料館」、乱歩の出生地で、同好会の有志が遊びがてら訪れている名張市立図書館などが候補にあがった。
 同好会のOBで、神奈川県立近代文学館の館長をしている紀田順一郎さんに相談したところ、同文学館が引き受けてもらえることになり、今日、贈呈式ということになったのである。
 
 贈呈式の後、館員の案内で、文学館のバックヤード見学をした。
 主として、神奈川県ゆかりの作家が多いのは当然であるが、文学館には作家本人や遺族から寄贈を受けた多くの生原稿が所蔵されている。寄贈された原稿は、まず、消毒され、それから、専用の引き出しや箱に収められる。一般への公開は、デジタル処理をして行っているということである。
 箱が積まれている棚の間の通路を通り抜けただけで、ゆっくり、見ている暇はなかったが、ミステリ関係では、中薗英助の名前を付した箱が目についた。紀田さんの話では、早川のポケット・ミステリの装幀をした勝呂忠の絵も所蔵しているとの話であった。
 ついで、雑誌が並んでいる書庫を見学した。スライド書庫には、文学系の雑誌だけではなく、幅広く、一般誌も並んでいた。全巻揃いではなかったが、マンハントやヒッチコック・マガジン、宝石という雑誌も相当数並んでいた。
 近くにこのような文学館があり、散歩がてらに寄ることができたら楽しいのにと夢想していた。今度は、東京の近場にある文学館も行ってみたくなった。

|

« 『ロング・グッドバイ』 | トップページ | 『狼花 新宿鮫Ⅸ』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『神奈川県立近代文学館』:

« 『ロング・グッドバイ』 | トップページ | 『狼花 新宿鮫Ⅸ』 »