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2007年4月20日 (金)

『制服捜査』

○2007年4月20日(金)

                             『制服捜査』 佐々木譲 新潮社

 佐々木譲の『制服捜査』は、広尾警察署志茂別町駐在所に勤務する川久保篤巡査部長を主人公とする連作ミステリ小説である。
 広尾警察署といっても、東京の広尾ではない。北海道警察本部釧路方面にある人口6000人の小さな町が舞台である。北海道の中でも、田舎の町である。東京と地方の格差も大きいのだが、地方の中心地域とそれ以外の地域の格差が大きくなっている。とりわけ、北海道は、札幌とその他の地域の格差は大きい。
 ホテルの最上階から眺める札幌は、高層ビルが林立していて、東京の景色と遜色がない。しかし、札幌から離れればはなれるほど、街並がさびしくなる。車で街中を通ると、人の気配を感じないことがしばしばある。西部劇映画のようなゴーストタウンを思わせる北海道の街は、碁盤の目のように道路が整然とできているだけに、余計、寂しさを感じてしまう。そのような町でも、人は生活し、様々なドラマがあるのだ。

 札幌の警察署で刑事課の捜査員をしていた川久保が田舎町の駐在所勤務となったのは、2年前の道警の不祥事のあおりである。不祥事といっても、川久保が関わったものではない。
 不祥事の発覚以来、道警本部は、一つの職場に7年在籍した者は無条件に異動となり、同じ地方で10年勤めると余所に移転しなければならないとされたためである。
 駐在所勤務は、普通は家族を伴うのだが、高校生の娘が2人いるので、川久保は家族を札幌に残しての単身赴任である。
 佐々木は、高校生の失踪、散弾銃で撃ち殺された牧場主、万引きをした少年、連続放火など、どこにでもありそうな事件を通して、北海道の小さな町の内実をあぶり出していく。 狭い人間関係であるが故に見逃されてしまう犯罪があり、その影で傷ついていく弱い人たちがいる。レッテルをはられてしまうと、小さな町では、それをぬぐうことは難しい。
 このような片田舎の町にも、研修生と称されて、低賃金で使われる外国人労働者がいる。
 
 道北にある人口4000人の町のさらに過疎の地域に、家族と10日ほど、生活をしたことがある。寝袋やキャンプ道具を持ち込んでの自炊生活をした。目の前にある国道を渡ると、駐在所があり、警察官の一家が住んでいる。小学生だった息子と同年齢の男の子がいおり、仲良くなったのはいいのだが、駐在所の住家に入り込んで、テレビ・ゲームに興じていた。都会の子も外で遊ばなくなったが、田舎の子も外で遊んでいない。それだけに、田舎の町は余計さびしく感じるのである。
 
 佐々木の『制服警官』は、北海道のどこにもある小さな町から、札幌、内地の世界につながっていく人間模様をしっかりと捉えた連作ミステリである。
 

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