« 「新たなる聖地ー甲子園から神宮へ」 | トップページ | 『七夕しぐれ』 »

2007年6月17日 (日)

『装丁物語』

○2007年5月17日(木)『装丁物語』 和田誠 白水Uブックス

 和田誠が装丁した本を何冊もっているだろうか。この原稿を書いている部屋には、なるべく、本を置かないようにしているが、和田の装丁になる本はないかなと見回すと、石上三登志の『名探偵たちのユートピア』(東京創元社)があった。
 ナイフを突き刺されて倒れている男の死体とそれを眺める5人の探偵達が描かれている。裏表紙は、丸テーブルの上に、電気スタンド、そして、その手前に鍵が置かれている。カバーを外すと、片目の絵の下にWE NEVER SLEEPとあり、その回りをPINKERTON'S NATIONAL DETECTIVE AGENCYという文字が囲んでいる。ダシール・ハメットもいたというピンカートン探偵社のマークである。
 もう1冊、ぼくも2つほど書いている『ミステリの名書き出し』(早川書房)はというと、表に暖炉の前のロッキング・チェア、ウィスキーを脇におき、パイプをくわえて、ミステリを読む男の絵が描かれている。カバー・ジャケットをはずすと中からタイプライターの絵が現われた。
 
 和田誠の『装丁物語』は自身が装丁をした本を題材に、1冊の本をどのように装丁していくかを丁寧に紹介している。
 筆記用具はロットリングを使うことが多いとか、色指定をどのようにするかとか、専門的なことを、和田の手になる遠藤周作の弧里案山人シリーズや星新一のショート・ショート集を例に具体的にわかりやすく説明している。
 和田は装丁としている。釘の象形文字の丁の字は、釘を使わないが、紙を合わせて本に仕立てるという匠の仕事のイメージで装丁を使っている。一般には、装幀とするほうが多いのだが、広辞苑は、装いを定めるという意味をもつ「装訂」が正しい用例としているという。
 
 日本の字は正方形の中に収まるようにデザインされていて、縦にも横にも組むことができるが、横長の「へ」、縦長の「り」、シンプルな「一」、複雑な「鬱」のようにいろいろな文字がある。装丁にそのまま使うとバランスが悪くなるので、文字の位置をずらしたり、文字の形を変える工夫をしたりする。
 装丁を依頼するのは、編集者や著者である。いい装丁をするには、編集者や著者との関係がうまくできたときである。編集者と和田との会話から、本のイメージやデザインのアイデアが次々とわいてくる様子が楽しく書かれており、本好きの人には楽しいものになっている。

 「ニューヨーカー物語」、ユリシーズ」、「パパラギ」などはタイトル名を聞いただけで、ジャケットのタイトル文字が浮かんでくる。
 丸谷才一の「さくらも さようなろも 日本語」や「おんなざかり」のタイトルを聞くと、表紙の色を鮮やかに思い出す。
 キャサリン・ヘプバーンの「アフリカの女王」やローレン・バコールの「私一人」となると、映画が好きな和田の頭の中が炸裂する。アイデアが次々とわいてくるのである。

 階下の書棚に行くともっとあるだろうし、最近、娘が占拠してパソコンを使用しているために、長居をすることがなくなった書斎兼書庫にも更に並んでいる。
 私が関心をもつ本がたまたま和田の手になる装丁だったのか、和田の装丁に惹かれてつい買ってしまったのだろうか。
 今度、和田が装丁した本を部屋に並べてみようかなと考えている。

|

« 「新たなる聖地ー甲子園から神宮へ」 | トップページ | 『七夕しぐれ』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『装丁物語』:

« 「新たなる聖地ー甲子園から神宮へ」 | トップページ | 『七夕しぐれ』 »