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2007年9月21日 (金)

『さよならを言うことは』

○2007年9月21日(金)
  『さよならを言うことは』 ミーガン・アボット 早川PMB

 ”悪女が息づき、情熱に狂い、裏切りが蔓延る、50年代LAチャンドラーの時代が鮮やかに蘇る”

 本の帯に惹かれて、この本を読み出した人は裏切られた思うかもしれない。チャンドラーの世界が鮮やかに蘇るのではなく、50年代を舞台にしたミステリだという程度の惹句にすぎない。
 
 ローラは、早くに両親を亡くし、たった一人の兄ビルを家族として生きてきた。地方検事局の捜査官のビルは、交通事故の相手となったアリスと知り合い、恋に落ち、結婚する。撮影所に勤めていたアリスは、若く、美しく、魅力的であった。
 兄の結婚を祝福しながらも、ローラは、次第に、アリスの過去に疑念を抱くようになる。

 ローラが一人称で語るこの物語は、じれったいほどゆっくり進んでいく。事件も起こりそうで、起こらない。頁の半ばまで進んでいく。アリスへの疑惑は、兄を慕うローラの妄執、嫉妬が生み出す妄想のように思えてくる。

 次第に、読み手である私の方も、最後まで読み通す時間を惜しむ気持ちが沸いてきたが、後半に至り、ローラの一人称でえがくこの作者の狙いが浮かび上がってくる。
 佳品。一般受けはしないだろうが、映像化すると面白そうなミステリである。

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