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2007年12月 8日 (土)

 『BOSS』

○2007年12月8日(土)
           『BOSS』 堂場瞬一 PHP研究所

 堂場瞬一の『大延長』は、高校野球の裏と表を描く、スリリングな大人の青春小説であった。グラブをもつユニフォーム姿の野球選手のジャケットを見て、内容を確認することなく、『BOSS』を購入した。
 メジャーを舞台にした小説とは思わなかった。
 それも、ニューヨーク・メッツのジェネラル・マネージャーとなった日本人の話である。 メジャー・リーグに行く野球の選手が増え、日本で活躍した外国人選手がメジャーの監督となったり、外国人が日本のプロ野球の監督になることも、珍しくない時代である。
 しかし、メジャーのフロントに入る日本人となると、夢の夢という感が強いのだが、この小説では、違和感のない話になっている。
 堂場の筆力のなせる技というべきかもしれないが、時代がそういう時代になったという方が的確なのだろう。
 
 カブス、レンジャーズ、フィリーズなどで、チーム編成を担当していた高岡脩二は、ニューヨークという世界一の大都市に本拠地を持つメッツのゼネラル・マネージャーとなる。
 ジェネラル・マネージャーは、チームの編成に絶対的な権限を持つ。メジャー・リーグでは、チームのオーナーや監督といえども、ゼネラル・マネージャーの権限に口を出すことは許されない。

 ”私の提唱する野球は、一見、地味に見えるかもしれません。しかし、年間のチーム本塁打数が二百本を超えても最下位になるチームがあるのも事実です。要は、効率の問題なんですね。確率の問題とも言えます。塁を埋めて、得点圏に走者がいれば、点が入る状況が広がる。全員がホームランを狙うようなチームでは、効率がひどく落ちるわけです。”
                                                                (p5)
 高岡のゼネラル・マネージャーの就任会見での言葉である。

 もう一人の主人公は、アトランタ・ブレーブスのゼネラル・マネージャーであるアーノルド・ウィーヴァー。メジャー・リーグの世界に身を投じて、50年というキャリアをもち、スタンドでファンにまじって、野球を見ることが好きな名物マネージャーである。
 ウィーヴァーはいう。
 ”だいたい、試合を見るのはスタンドって決まってるでしょうが。どうですか、この心地良い雰囲気”
  ”柔らかな芝の緑。まだ少し冷たい春の風。夏には夏の、この季節にはこの季節の野球の楽しみがある。狭い部屋に引っこんでたら面白くないでしょう”
                                                                  (p36)
 
 ”打率は低くても出塁率が高い選手がいるとしますね。どういうことかと言うと、フォアボールを多く選んでいるんです。仮に年間のヒット数が百本しかなくても、フォアボールを百選んでいれば、ヒット二百本と同じでしょう。塁に出るということには変わりはないんですよ。”
                                                                  (p81)
 
 高岡がチームを編成したメッツは、順調なスタートを切るのだが、好調は続かなくなると、ゼネラル・マネージャーとして、シーズン中といえども、野手のコンバート、選手のトレード、マイナーからの補強と手を打たなければならない。

 一方、スタートでつまずいたブレーブスのウィーヴァーは、ダブルAで投げている若いピッチャー、コックスを引き上げ、剛球派からナックルボウラーに変身した日本人投手藤本を起用する。

 高岡とウィーヴァーの独白を交互に挟み、メジャー・リーグの舞台裏の世界を垣間見せながら、物語が進んでいく。
 野茂が開いたメジャーへの道は着実に広がった。今年も、多くの日本の選手がメジャーへの移籍をしようとしている。
 選手の世界が広がるに従って、メージャーのフロントの世界にも、日本人が進出していっても不思議はない。そう思わせるほど、主人公である高岡の存在がきわめて自然である。
 実際に、メジャーのフロントで働く日本人がどの程度いるのだろうかと思いに取り憑かれた。

             
 

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