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2009年8月14日 (金)

 『孤狼―刑事・鳴沢了』『破弾―刑事・鳴沢了』

2009年8月14日 『孤狼―刑事・鳴沢了』
               『破弾―刑事・鳴沢了』  堂場 瞬一 (中公文庫)

 『破弾』、『弧狼』と堂場 瞬一の刑事・鳴沢了シリーズに嵌っている。
 鳴沢了シリーズの第1作『雪虫』では、祖父、父の後を継いで、新潟県警の刑事となった了は、50年前に起きた事件に、祖父や父が関わっていることを知り、祖父の死を目の前にする。
 第2作の『破弾』。了は刑事を辞め、故郷である新潟を去るが、刑事にしかなれない了は、警視庁の刑事となり、多摩署に勤務することになる。新潟県警に身内がいる了は、警視庁の刑事たちからも孤立していた。了は、女性刑事である小野寺冴と組んで、多摩公園で発生したホームレス傷害事件の捜査に当たるように命じられる。小野寺もまた、同僚刑事を撃ち殺した犯人を追い詰め、とどめの一発を撃ったという過去を持ち、疎んじられていた。 姿を隠してしまった被害者のホームレスを探す内に、二人は、公安が動いていることに気づく。
 突っ張っていきる二人が、ぶつかり合い、次第に惹かれていくあたりは、緊張感あふれていて、なかなか面白い。
 スポーツ小説とミステリを交互に書いていた堂場だが、このところ、ミステリに比重を置いているようだが、『破弾』では了が昔の仲間に誘われて、ラグビーを再開するシーンが描かれ、堂場の面目躍如といったところである。
 『破弾』は、多摩ニュータウンを舞台にしている。高齢化した街となってしまったニュータウンの様子など、堂場の描く、東京の郊外の姿は、新しい「都市小説」の誕生を予感させ、期待のもたせるシリーズである。

 奥付を見ると、『弧狼』から、文庫書き下ろしシリーズとなったようである。2005年10月25日初版、2009年5月15日15刷とあるのだから、結構、売れている。
 そういえば、。書店の平台に並びだしてからも相当時間が経過しているだから、さもあらんか。
『孤狼』では、冴と別れた了は、青山署勤務となっている。了は、本庁の捜査一課の沢登理事官に失踪した刑事の行方を今とともに捜すようにとの特命を受ける。調査を進める了たちに、不審な行動をする刑事たちが登場し、了が大事に思っている優美とその息子勇樹たちに危険が迫る。ストーリーが拡散気味となっていくのだが、刑事をやめ、探偵となった冴が絡み、大食漢の今の様子など、シリーズとしてのお膳立てが整ってきたといえる。
 次の一節を読めば分るだろう。堂場はチャンドラーの世界に入りつつあると思わざるを得ないのだ。
「何とかしたい。だが、刑事としてできることには限界がある。拠って立つ柱を失った気分だった。腐った大地の上で生きている自分は腐っていないと言い切れるだろうか。卑しい街を一人高貴な魂を持ったまま行くーーーと思っていても、世間はそうは見ない。いずれは私自身も腐っていくか、この大地から去っていくしかないだろう。」(p430)

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2009年8月 7日 (金)

『サッカーボーイズ 14歳 蝉時雨のグラウンド』

2009年8月6日

 『サッカーボーイズ 14歳 蝉時雨のグラウンド』 はらだ みずき 角川書店

 サッカーは11人でするスポーツであるが、ゴールキーパーは、他の10人とは異質の存在である。ボールを足で蹴るというスポーツにかかわらず、キーパーだけは手を使うことができるし、ユニフォームも異なっている。 敵がゴールを攻めてくる時、前にでてボールを奪いに行くか、守りを固めるかを瞬時に決断をすることを迫れられる。一瞬の躊躇で、ゴールを奪われてしまう。特に、ボールを取りにいって、敵からボールを奪えないときは惨めである。キーパーを抜いた敵は、易々とゴールを決め、自陣からは大きなため息がで、その責めをキーパーが一身に背負ってしまう。 自信を失うと、益々、判断に躊躇するという悪循環に陥ってしまう。観ている者もつらいが、やっている本人はもっとつらい。 はらだみずきの『サッカーボーイズ14歳』は、ゴールキーパーのオッサこと長内陽介を軸に話が展開する。 桜ヶ丘FCでキーパーをしていたオッサは、中学では、念願の野球部に入部した、。しかし、1年後、オッサはサッカーをしたいと、野球部を辞めて、サッカー部入ってくるが、大事な試合で、集中力を失い、つまらないミスをして負けてしまう。 はらだみずきの『サッカーボーイズ』シリーズも、3作目で、14歳となった。純真にボールを追いかけていたサッカーボーイも、中学2年ともなると様々な悩みをかかえるようになる。キャプテンの武井亮介は、不協和音の生じるチームを何とか立て直そうとするのだが・・と物語は進んでいく。 前2作ほどのパワーがないという気もするのは、キーパーという地味なポジションを描こうとしたせいかもしれない。 最後に、一人で突破していくことを信条とするフォワードの星川良が、囮となって、亮介に、パスを回し、ゴールを決めさせる。15歳となった良と亮介のダブル・リョウがチームを引っ張り、活躍するという次作への期待をしたくなる1冊である。

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2009年8月 1日 (土)

『二度目のノーサイド』

2009年8月1日 『二度目のノーサイド』 堂場 瞬一 (小学館文庫) ¥ 670 

 桐生が所属していた武蔵野電産ラグビー部は、5年前、会社のリストラにより、解散を余儀なくされた。ラグビー部が消滅したことにより、他チームに移籍して、ラグビーを続けようとした者、解散を機に、引退して、故郷に帰る者など、様々な人生を送っている。桐生は、ラグビーをやめ、会社に残るが、仕事にも、家庭にも、中途半端な生活を送っていた。
 マネージャーをしていた石川の葬儀の席で、石川が、ラグビー部の最後の試合の10分間、自分たちのラグビーができなかったことを、死ぬまで許せないと言っていたと聞かされる。
 シーズンが終われば解散、負けたらそこで全てが終わりという状況の中で、武蔵野電産は、全国社会人大会の3回戦で、ライバルであったフジビールと対戦し、敗れる。追いつき、追われるという戦いの中、武蔵野電産は、フジビールと引き分け、くじ引きで敗れた。 この最後の試合の戦いは、桐生とその仲間であった男たちの心に今でも、重くのしかかっていた。それぞれの思いを秘めながら。
 フジビールとの再試合を思い立った、桐生は、昔の仲間に声をかけ、自ら、厳しいトレーニングを課するのだが、と話は進んでいく。

 ラグビーの試合は、時折、早慶戦や天皇杯をテレビで観る程度で、実際の試合を観た記憶はない。テレビも、慶応が弱くなってからは観ることもなくなってきた。
 一時、人気のあったラグビーも、サッカーに押されて、マイナースポーツになりつつある。協会もトップ・リーグの創設など、努力をしているようだが、いかんせん、代表戦ともなると、大差で敗れ、興を失ってしまうことが多い。
 それでも、ときおり、周りに、強烈なラグビーファンが現れる。ラグビー部のマネージャーをしているという女子大生は、つい最近、ニュージーランドに、ラグビーの指導者の家にホームステイをしてきた。
 日本で開催された「U20世界ラグビー選手権」の見所や、ワールドカップの誘致の様子を熱く伝えるメールを送ってくる人もいる。
 
 『二度目のノーサイド』は、企業スポーツの消滅により、翻弄されながらも、ラグビーに対する熱き思いを失わない男たちの姿に、あらためて、スポーツをするということはどういうことななのだろうかと考えていた。
 ボールを取り合い、ボールを投げ、持ち、走る、ぶつかる、追いかけてタックルをするという格闘技の王者といえるラグビーの原初的な面白さ、魅力を伝える好編である。

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