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2010年10月10日 (日)

『おまんのモノサシ持ちや!』 篠原 匡

2010年10月10日『おまんのモノサシ持ちや!』 篠原 匡 日本経済新聞出版社

 久しぶりに刺激的な本を読んだ。
 高知から発信する異色のデザイナー、梅原真の仕事を通じて、私たちが地域で生きていくこととは何か、そして、私たちにとって仕事とは何かという示唆に満ちた本である。
 梅原がパッケージデザインをした馬路村農協の「ぽん酢しょうゆ ゆずの村」、明神水産の「一本釣り藁焼きたたき」などの商品を初めて見たのが、何時、どこで見たのかは忘れてしまったが、その印象は強烈で、ついつ手にしたときのことを思い出す。
 日本の外れの地域に光を当てていく梅原の仕事は、単に商品のデザインをするのではなく、そこには大きな”グランド・デザイン”がある。
 梅原は、仕事をするにあたって、まず、現場にいく、そこで得たものから、グランド・デザインを生み出すフレーズが沸いてくるという。
 そして、梅原が、デザインの原点とするのは、東京駅の八重洲口で見かけた宝くじ売り場のおばさんの「黙って買う」「祈る」「あたる」の手書きのビラである。このビラを通じて、売り手と買い手にはある種の思いがコミュニケーションとなる。

 この本のなかには、「コミュニケーションのスイッチを入れる」、「マイナスとマイナスをかけるとプラスになる」など、発想法や本質を見極める梅原の方法論が随所に顔を出している。
 ただ、そこに地方を活性化させる仕事の流儀を短絡的に引き出そうとしてもおそらくは役に立たないであろう。
 梅原は、買ってほしい、来てほしいという前に、自分考え方、よってたつ位置を明らかにせよといういう。すなわち、自分のものさしを持て、『おまんのモノサシ持ちや!』というとである。
 それを読み取るだけの内面の豊かさをもっていなければ、自分のものさしをもつことはできないし、仮に、自分のものさしをもったとしても、ひとりよがりのものになってしまう。
 それでも、人の様子、空気を読んでしか決めることができないよりはいいかもしれないのだが、生み出せるものは少ない。もっと、感性を磨けということであろう。

   この夏、北海道の下川町で、道東4町(下川町、滝の上町、美幌町、足寄町)のカーボン・オフセット用クレジットの認証制度「J-VER制度」に関する会議が行われた。高知県庁の森林関係者から熱い話を聞いた後ということで、本屋の平台に並んでいた梅原の本に興味をもった。
   高知県は、森林面積が県土の84%ということもあり、カーボン・オフセットでは先駆的に活動している。梅原は、昨年来、高知県の新しいものさし「はちよんプロジェクト」と始めたという。高知にでかけて、その動きをこの目で見てみたいと思った。
   そういえば、先日、東京創元社の鮎川哲也賞の受賞パーティであった鉄道ファンのTさんが、高知にインクラインのケーブルカーに乗りに行くといってた。釣瓶式のケーブ
  ルカーで、車両下のタンクに水を注ぎ、重くなったら車両は下がって行き、タンクから水を抜くと、軽くなって上に上るのだという。どこにあるのかと調べてみると、馬路村であった。
   梅原が関わった仕事として、赤岡町の絵金(町絵師・金蔵)のことがでてくる。そういえば、私の関わっている文化財の保存修復のNPOの関係者が、夏の夜に、町家に並べられる絵金の描いた絵について熱く語っていたことを思い出した。
   龍馬ブームが一段落したら、是非とも高知に行ってみよう。

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