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2012年1月22日 (日)

『弁護士探偵物語 天使の分け前』

2012年1月21日『弁護士探偵物語 天使の分け前』 法坂 一広  宝島社

  ミステリ・マガジンに掲載する原稿『弁護士のミステリ』を書いた直後ということもあり、書店の棚に並んでいた『弁護士探偵物語 天使の分け前』を衝動買いしてしまった。
 2011年度第10回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作で、作者は、現役の弁護士である。ただし、法坂一広はペンネームである。
 福岡の弁護士「私」の一人称で物語が展開するハードボイルド・スタイルのミステリである。
 母子が殺害された現場で、血まみれな姿で発見された男の事件に「当番弁護士」として関わることになった「私」は、何かひっかかるものを感じる。被告人は、法廷で有罪であると認めるが、「私」は無罪を主張するが、「私」は国選弁護人を解任され、弁護士業務停止1年間の懲戒を受けてしまう。
 1年後、業務に復帰した「私」は、別居中の夫に生活費を請求したいという美女の依頼を受け、夫の「トマト缶男」に会った日に、母子を殺害された大柄な男の訪問を受ける。
 廃業中のジャズ喫茶を事務所とし、ロバート・ジョンソンのブルースを口ずさみ、「正義の実現のために、悪魔に魂を売ったんだよ」と軽口をたたき、ミッキー・スピレインの『裁くのは俺だ』を愛読書とのたまい、ジャズのスタンダード曲「ディア・オールド・ストックホルム」の口笛を吹いて町を歩く。
 完全に、B級ハードボイルドの世界である。
 ハードボイルド・ミステリと謳うミステリは売れないとされているのに、ロバート・ジョンソンやミッキ・スピレインに関する軽口をいっても、今ミステリを読んでいる読者がどれだけ理解できるのだろうか。
 オー、よくやるなと思いながらも、この本がうけるのだろうかとの心配もある。このような語りとその背景を理解できないものにとっては、ミステリとしての荒削りな部分だけが気になるだけかもしれない。
 1973年生まれの作者が、この時代錯誤的な世界をどう展開していくのか、次作を期待したいと思った。

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