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2013年9月 1日 (日)

『教場』 長岡弘樹

『教場』 長岡 弘樹 (著)  小学館  ¥ 1,575 

 「教場」とは文字通り、教える場、すなわち教室のことである。
 あまり、目にしない言葉だなと思いながら、ネットで検索すると、日本で最初の藩校とされる岡山藩の花畠教場の名前がでてきた。現在でも、弓馬術礼法の小笠原教場、茶の湯や珠算塾のように、伝統を誇示するような教室に使用されているようである。最も、スイミング・クラブや学習塾でも教場の名を謳っているものもあるが、歴史・伝統がありそううな語感を意識したネーミング思われる。
 長岡弘樹の『教場』は、警察官や警察職員を教育・訓練する警察学校のクラスのことである。警察学校に入学し、初任研修を受ける警察官たちの連作ミステリである。4月に入学し、9月に卒業するまでの全6話からなっている。
 1作ごとに、主人公が変わり、視点を変えていくが、登場人物は共通である。そして、探偵役とといっても、文字通りの探偵役といえるのかどうかは分からないが、キーパーソンとなるのが教官の風間公親である。
 教場では、成績が不良で、警察官に不適格とされる者は依願退職を迫られたり、脱走してしまったりと、容赦なく振り落とされる。そして、入校早々から、教官は、この方針を公言し、徹底する。些細なミスも許されす、ミスを犯したり、規則に違反すると、ビンタを受けたり、罰走などの罰を受ける。そして、クラスや班の全員が連帯責任で罰を受けたりする。
 冒頭の第1話から、このような強烈な話が展開するので、余りいい気分の小説ではない。教場の実態を取材して書かれたものかと思い、最後の頁に、参考文献が10冊以上あげられている。そして、その後に、「本作品はフィクションであり、登場する人物・団体・事件等はすべて架空のものです。」というおきまりのエクスキューズが記載されている。このエクスキューズは、一見、法的な責任を避けるための文言のようにみえるが、反面、「すべて架空のものではなく、実態を描いています。」との意図も垣間見えてくる。
 いずれにしても、警察官の教育の実態がこのようなことだから、警察官の不祥事がおきるのではないかなと、思いながらも、この程度の厳しさで教育しなければ、警察官の教育はできないのではないかなとの思いがないまぜになりながら、読んでいた。
 『教場』は、連作ミステリとして、1話ごとのメリハリがあり、6話全体の流れもうまくてきていて、面白かった。
 エピローグを読みながら、教官の風間自体が、良い警官、悪い警官、それぞれを演じきり、最後には、良い警官風になるのだが、ここを卒業し、実際の職務についた警察官が時を経るに従って、想像力がなく、自己保身に走っていくのは、このような教育を受けているからではないかという疑念がつきまとってしかたがなかった。
 現実の警察官の不祥事や、全柔連の一連の問題、そして、その昔の日本の軍隊教育を想起したのは私だけであろうか。

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